日本酒を使った料理の一つに、「美酒鍋(びしゅなべ)」という鍋があるのをご存知でしょうか。
これは、広島県のある地域で作られる郷土料理の一つで、その最大の特徴は「日本酒」をふんだんに使っていることです。
日本酒好きの方であれば、その名前だけで興味をかきたてられませんか?
今回は、日本酒を使った鍋「美酒鍋」の、発祥やレシピについて詳しくご紹介します。
美酒鍋とは?
発祥の地、広島
美酒鍋は、広島県東広島市発祥の郷土料理です。
元々は、酒蔵で酒をつくる「蔵人」の賄い料理でしたが、次第に家庭にも広まりました。
現在は宴会料理の一つとして親しまれ、催事の日などにもてなされます。
以前は「びしょ鍋」と呼ばれた
美酒鍋は、「びしゅなべ」と「びしょなべ」、二通りの呼び方があります。
なぜ、二通りの呼び方があるのでしょうか?
そこには、鍋が生まれた由来が関係しています。
そもそも「びしょ」とは、酒蔵の若い蔵人のこと。
水仕事が多く、いつも身につけている服がびしょびしょであったことから、そう呼ばれました。
元々は、彼らびしょへの賄い料理として、日本酒を使った鍋を振る舞いました。それが次第に、「びしょ鍋」の通称になったのです。
そうして生まれた「びしょ鍋」に、後に「美酒鍋」の字があてられ、漢字表記の場合は「びしゅなべ」と読むようになりました。
このような理由で、現在では二通りの呼び方が残っています。
気になるその味は?
美酒鍋は、葉物野菜やきのこ、ねぎなどの豊富な野菜と、肉を日本酒で煮込む料理です。
味付けは塩こしょうと非常にシンプル。
しかし、煮込んだ野菜の甘味や肉の旨みを、日本酒の香りがひきたて、水炊きよりも風味豊かに仕上がります。
食べる直前には、こしょうを多めに入れるのがおすすめ。
具材の旨味がギュッと詰まったスープに、ピリッとした辛みがアクセントになりますよ。
ちなみに、日本酒を入れるため、「酔ってしまうのでは?」という心配をされる方もいらっしゃるかもしれません。
実際は、お酒のアルコールは加熱で完全に抜けるので、その心配は無用です。
ただし、日本酒の風味は残るので、お酒の味自体が苦手な方は控えるとよいでしょう。
おうちでつくれる美酒鍋のレシピ
ご家庭でも作れる美酒鍋のレシピを、ご紹介します。
材料(2〜3人分)
- 豚・鶏などの肉・・・500g
- 厚揚げ・・・1枚
- こんにゃく・・・1枚
- 砂肝・・・200g
- ピーマン・・・2個
- 白ねぎ・・・1本
- 白菜・・・1/4玉
- たまねぎ・・・2個
- しいたけ・・・2個
- にんじん・・・1/2本
- にんにく(スライス) ・・・少々
- 清酒・・・適量
- サラダ油・・・少々
- 塩・・・少々
- こしょう・・・少々
作り方
①肉、厚揚げ、野菜などの具材を、食べやすい大きさに切ります。
②鍋に油を入れ、火にかけます。油が熱されたら、にんにくを入れます。にんにくの香りが立ってきたら、豚ばら肉を入れ、表面の色が変わるまで炒めます。
③鶏肉、砂肝、野菜、厚揚げ、こんにゃく、しいたけの順に入れます。塩とこしょうを入れます。
④具材が半分浸るくらいまで、清酒をたっぷり入れます。味見をしながら、塩とこしょうで味を整えます。味が濃くなった場合は、清酒で薄めます。
⑤野菜がしんなりしたら、完成です。お好みで、食べる直前に、こしょうを多めに入れます。
参照:『中国四国地域の伝統料理〜地産地消で季節を味わう〜』 / 広島県「美酒鍋」レシピ
まとめ
日本酒を使った鍋なんて、初めてきく方は、斬新で驚きだったのではないでしょうか。
いつも通り飲むだけでなく、日本酒は料理としても活用できます。
日本酒好きで集まって、美酒鍋をつつくのも楽しめそうですね。
参考文献
『中国四国地域の伝統料理〜地産地消で季節を味わう〜』 農林水産省中国四国農政局